夏のスーツは、冬とは着こなしの観点が違っていて、しかもクールビズも絡んでくるので難しいと感じる人も多いでしょう。そういう時期だからこそ、垢ぬけたスーツの着こなしでデキる男をアピールしたくありませんか？実践的なヒントを紹介します。
この記事の目次
クールビズこそ周りと差を付けるチャンス
今ではすっかり浸透した『クールビズ』ですが、それでもどういった着こなしをしたらよいか、常々悩まされている男性も多いようです。
そういう状況を逆手にとって、クールビズにこそおしゃれな着こなしで、周りと差が付けられるチャンスととらえましょう。クールビズでのひと味違った着こなしのヒントを紹介します。
少しの工夫でオシャレなスタイルに
クールビズと言っても難しく考える必要はありません。元々のコンセプトである、冷房を抑えて快適に働けるビジネスの装い、というシンプルな原点に立ち返りましょう。そのストーリーの中での、少しの工夫でオシャレなスタイルを目指せばよいのです。
たとえば、涼し気なクリームイエローの麻素材スーツに真っ白な麻のドレスシャツ、ノーネクタイでジャケットの胸に麻のきれいなサックスブルーのポケットチーフ。たったそれだけのシンプルな装いでも、職場や取引先の空気を爽やかにしてくれるでしょう。
崩れたスタイルになっていませんか？
クールビズで気を付けておきたいのは、ドレスコードをわかったうえで『崩す』のが好ましいドレスダウンであり、ドレスコードを理解せずに崩すと『だらしない印象』の着こなしに陥るということです。
何も考えずにいつものスーツスタイルからネクタイをはずしただけのような、野暮ったいスタイルはNGです。それならまだ、いつもどおりきちんとネクタイをしているほうがましと言えます。
夏スーツのマナーや着こなし方について、詳しく見ていきましょう。
覚えておきたい夏スーツのマナー
夏にも必ずスーツを着用すべき職種、業種、立場のひともたくさんいます。スーツを夏に着る時の、覚えておきたいマナーを確認しておきましょう。
ジャケットは用意しておく
夏の日差しはきついので、ついつい「今日はジャケットはなしでいいか…」などと考えてしまいがちです。しかし、羽織っても羽織らなくても、ともかくジャケットは携えておきましょう。
移動中は羽織る必要がないので、持っているだけでよいですが、いざというときは羽織って、きちんとスーツスタイルになれるようにしておけば安心です。また、手に持っているだけでも、ないのと比べて品格の差が出ます。
ジャケットなしで手ぶらの人、ジャケットなしで鞄だけの人、鞄なしでジャケットを持った人、鞄とジャケットを持った人それぞれを、外見で信頼できる順位をつけるとどうなるかを考えれば、ジャケットの重要性がわかるはずです。
ジャケットの下の半袖はNG
ビジネスマンの中には、スーツスタイルなのにドレスシャツが半袖のひともいます。しかし、これはスーツの着こなしではNGです。シャツの意義は歴史を遡れば、肌を直接に服（スーツ）と触れ合わさせないための肌着や下着の役目でした。
ジャケットを着用しないスタイルの時なら問題はありませんが、ジャケットを着る時にシャツが半袖なら、腕が直接服に触れますので、スーツという長い歴史を持つアイテムのストーリーから外れるのです。
また、汗ばむ夏に半袖の状態でジャケットを着ると、ジャケットの袖裏に汗が付着してしまいます。着ている本人もベタついて気持ち悪いうえに、服も汚れるので、ジャケットの下に半袖を着るのは避けましょう。
シャツスタイルの場合は腕まくりで
スーツスタイルの時は必ず長袖を着て、ジャケットを脱いでいる状態で暑いときは、腕まくりをして対応すれば問題ありません。もちろん目上の人と面会するときは腕まくりもNGで、ジャケットを着用するべきです。
また、真夏にジャケットなしでも問題ないシチュエーションの場合でも、長袖シャツを着て腕をまくっているほうが、半袖シャツより品格は上になります。
紳士服では、肌の露出を極力少なくすることがエレガンスの度合いと比例します。長袖シャツを着ていれば、いざというときに腕の肌を隠せるので、隠しようがない半袖シャツよりもエレガントと言えるでしょう。
まずはサイズ選びを見直そう
夏のスーツを考えるにあたって、まずはサイズの選び方から見直してみましょう。
デキる男はまずジャケットから
サイズを合わせる順序として、ジャケットとパンツの2つのうちでは、まずジャケットのほうが先になります。絶妙にフィットしたジャケットは、着る人の印象さえもよくする効果もあるようです。バランスが合ったジャケットを着用しましょう。
フィッティングの目安としては肩幅はほぼジャストで、アームのシルエットも太過ぎず、袖の長さに関しては、腕を降ろした状態でシャツのカフスが1～1.5cm見える長さです。シャツがチラっと見える程度でもよいでしょう。
着丈はトレンドの影響もあり、若い人はヒップがギリギリ隠れるか、少しのぞくかくらいで着てる人も増えています。極端でなければ短めでも問題ありません。胴回りは第1ボタンを止めて、身体との間に握り拳がきちっと入るぐらいが良いフィット感です。
スタイルの良さを決めるパンツ
均整がとれた体型であれば、ジャケットが合っていればたいていパンツもきれいに合うことが多いです。パンツのサイズが合っていなければ、スタイルが台無しになります。
パンツがしっくりこない場合は、補正によって、1～2サイズ分ぐらいの修正ができます。パンツの後側の裏に腰からヒップにかけて、また内股の裏側にも補正で出せるように『縫いしろ』と呼ばれる生地の遊び分が設けられているので、サイズアップが可能なのです。
股下丈は長すぎるとだらしなく、短すぎると縮んだようでいまいちです。ハーフブレイク（軽いワンクッション）がスタンダードであり、限りなくノーブレイクに近い長さが今っぽい印象となります。
完全なノーブレイクやフルブレイクは極端なのでNGです。
シャツでお洒落と着心地を楽しむ
シャツは、着こなしのキーポイントになる重要なアイテムです。シャツが体に合っていると、印象も良くなります。サイズに関して確認するポイントは以下の通りです。
- 肩幅：ジャスト
- 首周り：実寸プラス2cm程度
- 袖の長さ：手のくるぶしから2cmほど下まで来る
- 胴回り：実寸からの差8〜12cm程度のゆとり寸を持つ
上記の条件を満たしていれば見た目も着用感も快適でしょう。肩が凝らず、ジャケットの袖通しも良くて動き易いのが、理想的なシャツのサイジングです。
カラー選びで差を付ける
夏に着る服の色は、涼しさの感覚的な部分を決定します。黒い服は着ている本人も周りも暑苦しくなり、白い服ならその周辺が涼しげな印象を与えてくれるでしょう。
明るめのトーンで爽やかさを演出
少しでも爽やかさを出すためには、スーツは明るめのトーンを選ぶのが賢明でしょう。濃紺よりも花紺であり、花紺よりもスカイブルーのスーツのほうが爽やかです。
グレー系では、チャコールグレーよりもライトグレーが、ライトグレーよりもシルバーグレー、さらにアイスグレーからアイボリーという順に、清々しさが上がります。
サマーダークと呼ばれるベージュ系やグレーッシュな薄めのダークカラー、ナチュラルカラーなども、明るめのスーツの色目と言えるでしょう。
ビビッドカラーを取り入れ印象を高める
スーツの本場英国では、スーツはベーシックなダークであるべきとされます。夏はサマーダークと呼ばれるベージュ系、グレーッシュなグリーンやブルーグレーまではOKです。一方、Vゾーンは着るひとの個性なので、自由にカラフルにしてよいと言われています。
夏場は、Vゾーンのドレスシャツ・ネクタイやポケットチーフなどの周辺アイテムに、ビビッドカラーを差し色で使いましょう。スーツのダークな色目トのコントラストが、印象を高めてくれるでしょう。
白ベースのネクタイで清涼感を出す
夏物特有ですが、ネクタイの色合いの中では、白ベースのものがあります。白地にドット（水玉）であったり、ストライプであったり、あるいはペイズリーやアニマル柄などです。
清涼感があり、周りにも快適な印象を与えます。素材もシルクだけでなく、麻やコットンが混ざったものだと清涼感がさらにアップするでしょう。
ただし、白地の部分が汚れると目立ち易いので、汚さないように注意してください。もしも汚してしまったらクリーニングしましょう。
さりげなくオシャレに着こなすテクニック
スーツはこれ見よがしなオシャレよりも、さりげなくオシャレに着こなしたいものです。そのほうが垢抜けた印象を与えてくれるでしょう。さりげなくオシャレに着こなすテクニックを紹介します。
本切羽を開ける
クラシコイタリアのスーツに多い仕様ですが、ジャケットの袖ボタンを『本切羽』にするのもさりげないオシャレです。切羽というのはジャケットの袖ボタンのボタンホール状の飾りのことを言います。飾りなので開けられません。
本切羽は本当に開けられるように、ボタンホールが開けてある仕様のことを言います。古いイタリア映画では、登場人物がジャケットを脱がずに袖ボタンを外してから、シャツのカフスとともにジャケットの袖口を折り返し、手を洗います。
そういう意味ではもともとは実用的な仕様だったのでしょう。ファッションとしての本切羽の裏付けを知ったうえで、本切羽にして1個か2個、ボタンを開けて着こなすのも粋です。
フロントボタンの数を少なくする
フロントから見えるボタンの数を減らすことで、エレガンスを表現できます。『ワンボタンスーツ』は、ヨーロッパにおいて以前から存在しており、英国ではワンボタンかつラペル（下襟）が『ピークトラペル（剣先襟）』のスーツが、フォーマルシーンで見られます。
アイススケートの羽生選手が、平昌オリンピックの凱旋パレードで、ワンボタン＆ピークトラペルのジャケットを着用するなど、近年では日本でも見かけるようになりました。
着丈を調整する
着丈は、時代によっての流行がはっきり出る部位です。現在のスタンダードな着丈は、20年前のスタンダードとは5cm以上も短くなっています。そういうトレンドに目が慣れているので、長めだと野暮ったく、古臭く見えてしまいます。
そのため、長めだと感じたら着丈を調整しましょう。たとえ1cmであっても印象が変わるものです。調整することで服のバランスが崩れないか心配かもしれませんが、3cm程度までの調整であれば影響はありません。
センスが光るスーツベストを着こなす
着る人をよりスマートに見せて、個性を引き立てるアイテムがスーツベストです。着用のメリットやポイントを見ていきましょう。
ベスト着用のメリット
まず、ベストの着用の有無によって品格に差が出ます。ベスト着用はダブルブレストを着るのと同じで、品格が上なのです。スーツの本場である英国の階級社会の価値観に由来します。
また、体型をよりスタイリッシュに見せる効果があります。少々お腹が出ている人でも、サイズの合ったベストを着ていれば、少し精悍に見えるようです。
そして実用的には、胸とお腹、そして背中をカバーするベストを着ていることで、夏は冷房がキツくて辛いときも緩和され、冬は屋外の厳しい寒さから守ります。
気をつけたいポイント
ベストの着用にあたって、気をつけたいポイントを挙げていきます。
ベストの丈は長すぎても短すぎても格好悪いです。ベルトをちょうど隠すぐらいの適切な丈を選びましょう。
ベストの胴幅は緩すぎるとNGです。かといって狭くて引っ張りジワが寄るのももちろんダメです。もっともよいのは、少し胴幅に余裕があるベストを、背中の尾錠を調節して幅を少し狭めてジャストフィットさせる着こなしです。
定番は白シャツにグレーのベスト
ベスト使いの着こなしでもっとも定番なのは、グレーベストに白のシャツを合わせるコーディネートです。グレーの大まかな3段階であるライト・ミディアム・チャコールはそれぞれ使えますが、汎用性が高いのはライトからミディアムにかけてでしょう。
ミディアムグレーの無地のスーツベストがあれば、たいていのスーツの中に着用しても違和感はありません。汎用性が高いスーツベストを、ぜひ一度試してみてください。
シーン別夏スーツの着こなし方
暑い夏でも、スーツを着用するべきさまざまなシーンがあります。どういうスーツ、どんな着こなしをすればよいか、迷うこともあるでしょう。ここでは、シーン別に着こなし方の参考になる情報を紹介していきましょう。
身だしなみが特に大切な就職活動
クールビズの普及で、砕けたスタイルの会社員も夏には多いです。しかし、就職活動中のリクルーターはスーツの着用が基本とされます。
職場ではインナーを工夫して着心地アップ
社内でのデスクワークを想定すると、昨今のクールビズの流れで冷房は抑えられ、暑さを感じながら仕事をする場合もあるようです。そんなときはインナーを工夫して、快適な着心地を目指しましょう。
クールビズをにらんだ企画の、快適な機能素材のインナーを各社が出しています。涼感・吸湿・速乾・防菌抗臭・ストレッチなど、自分に合った機能のインナーを選んで、オフィスワークを快適にしましょう。
結婚式やパーティでは明るめの色を
ひと昔前は結婚式は礼服、パーティもダークスーツが基本でしたが、時代の流れによって変わってきました。
特に夏場のおいては、色目の自由度は高くなっていますので、自分も周囲も快適さを感じる明るい色目のスーツなどが好感が持てます。
結婚式では、ライトグレーや明るめのベージュ、パーティならスカイブルーやピスタチオグリーンまで、カラフルなスーツを選んでも良いでしょう。
夏スーツのお手入れ方法
夏は着用時に汗をかくだけでなく、保管しているときも湿気が多く、なかなかスーツがパリッとしないと悩んでいる人もいるでしょう。
そんな人のために、夏スーツのお手入れの基本を紹介しましょう。
シワや汚れ取り
シワや汚れはスーツにつきものです。それでもマメにお手入れをすれば、いつまでもスーツを傷めずにいられます。基本はブラッシングです。
1日活動するとスーツの表面のさまざまな塵（ちり）や埃（ほこり）が付着し、放っておくと織組織の中まで入ってきます。やがてそれらが繊維を酸化させたり、服につく虫の餌になったりと、変色の原因となり、服地を劣化させる原因となります。
それらを洋服ブラシでブラッシングしましょう。繊維にブラシをグッと入れ込んでかき出してください。
ブラシをかけてから霧吹きで表面を湿らせて、風通りが良いところに吊っておけば、スーツが持つ復元力でシワも消えていきます。手っ取り早く済ませた場合は、スチームアイロンで蒸気をかけてから、当て布をして中低温でアイロンをかけて乾かせるイメージでプレスするのも効果があります。
臭い取り
臭い取りに関しては、最近は『ファブリーズ』や『リセッシュ』のような優れた衣類の消臭剤が手軽に入手できるので、使わない手はありません。
焼肉屋さんでついた臭いや、タバコの臭いを消すにはスーツの外側へのスプレーが効果的ですが、汗臭さが気になる場合は、内側にしっかりスプレーをしましょう。
スプレー後は湿っているので、風通しの良い場所で吊っておくことを忘れないようにしましょう。乾いていく過程で薬剤と一緒に、臭いの元も蒸発していきます。
まとめ
夏のスーツの着こなしやマナー、お手入れなどの基本情報を紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。さまざまなルールやコツ、工夫なども必要ですが、それができれば、その人の個性を出していけます。
しっかりと基本を押さえて、夏のスーツファッションを楽しみましょう。