タキシードは、『ブラックタイ』というフレーズが象徴するように、黒こそが正統です。そんな黒のタキシードを、存分に着こなすための作法はおさえておきたいものです。そしてフォーマルの場でも少し制約が緩い、パーティなどでのアレンジ方法も含めて解説します。
黒のタキシードの特徴
黒のタキシードの特徴とは何でしょう。そもそもタキシードはテイルコート、すなわち最上級の夜の正装である燕尾服の代わりになるものでした。準礼装と言います。
これだけある礼装の種類
礼装の種類はいろいろとありますが、なぜ種類があるかというと、『格』の区別があるからです。現代では、このことをしっかりと認識している人は少ないかも知れません。実は、礼装にはそれぞれ格のようなものがあるのです。格が上のものから説明します。
正礼装は『モーニングコート』(昼間の慶事・弔事)と『燕尾服/テイルコート』(夜間の慶事)です。準礼装は『ディレクターズスーツ』(昼間の慶事・弔事)と『タキシード』(夜間の慶事)になります。略礼装は『ブラックスーツ』『ダークスーツ』(慶事・弔事全般)です。
このように、格が3段階に分けられます。それと着用する『時間帯』も区別があります。モーニングコートは午前~夕方5~6時ごろまでのいわゆる『昼間に着る正礼装』です。タキシードは、夕方~夜にかけての『夜間に着る準礼装』です。
タキシードの中でも黒は最もフォーマル
タキシードの基本であり、最上級のフォーマルな色は『黒』です。タキシードのスタイルの中で、黒タキシードに黒の蝶ネクタイ、カマーバンド、黒のオペラパンプスの出で立ちを『ブラックタイ』と表現するぐらいです。
実際に黒のタキシードは、もっとも人気があります。新郎の場合は隣の新婦が白いドレスを着ることが多いため、新郎が黒のタキシードであれば新郎新婦で白黒と並び、それぞれの存在感をできます。
もちろん、ゲストの立場でも黒のタキシードは、もっともきっとした服装だと評価されます。
黒のタキシードの着こなし方
黒いタキシードの着こなしのルールはどのようなものでしょうか。恥をかかないためにも確認しておきましょう。
定番はウイングカラーシャツと蝶ネクタイ
タキシードのVゾーンは、ウイングカラーシャツと蝶ネクタイが基本です。
ウイングカラーは、スタンドカラーでなおかつ、左右の襟の先が三角形に折れています。それが鳥の翼に似ているのでウイングカラーと呼ばれます。とても煌びやかなシャツです。
ウイングカラーシャツは、胸に細かいプリーツが入っています。プリーツは昔、胸元のシャツを見せることを避けるため、別の布で装飾していた名残だという由来があります。
黒のシルクの蝶ネクタイは、別名ボウタイとも呼ばれます。新郎でもゲストでもこれを締めれば間違いはありません。タキシードと燕尾服に対応するネクタイです。
パーティやセレモニーに着るスーツに合わせて、締めるスタイルもよく見受けられます。昨今では、ドレスダウンに使えるアイテムとしても人気が復活しています。きれいめのカジュアルスタイルに、蝶ネクタイを合わせる着こなしも増えています。
ベストかカマーバンドで紳士な印象を
共生地のベストかカマーバンドも、紳士的な印象を与えるアイテムです。どちらかといえばタキシードではカマーバンドが主流です。腹部を隠す大切なアイテムがカマーバンドで、共生地で作られるベストの代わりになります。
ベストもカマーバンドも、その役割は前述のシャツの胸のプリーツと同じく、本来下着であるシャツを隠すためなのです。
色は蝶ネクタイと合わせるので、黒のシルク製が望ましく、多くは蝶ネクタイとセットになっています。『ブラックタイ』スタイルを完成させるためには、カマーバンドが必要不可なのです。
靴は黒のエナメル
靴は、黒のエナメルでないと正統ではありません。デザインはオペラパンプスか内羽根のストレートチップです。
オペラパンプスという名の通り、オペラ観劇や音楽会・舞踏会・晩餐会などの夜会用に着用される靴です。リボン飾りと光沢がきついエナメル素材でレディースのようですが、タキシード着用時の最上級のフォーマルシューズです。
ウェディングで履くのに、現実的なのはオペラパンプスよりもエナメルシューズでしょう。オペラパンプスほどの制約はなく、デザインも内羽根のストレートチップなので、ビジネスシューズと近いのです。
夜会でエナメルを履くのは、社交ダンスを踊る場合に男性が女性のロングドレスを靴墨で汚してしまうことを避けるためという、ジェントルマンな理由です。また、光沢があるのでドレッシーさも演出できます。
タキシードでやってはいけないこと
タキシードを着用している時にやってはいけないNG項目があります。これはおさえておかないといけません。
黒ネクタイはいいの?悪いの?
『黒ネクタイ』は、結論から言うとOKです。まずタキシードは一旦置いておいて、ブラックスーツの場合、欧米では全く問題なく、普通にお祝い事やパーティで黒の結び下げ、つまりレギュラータイを締めています。
次に、タキシードにおいて『ブラックタイ』という言葉が黒タキシードに白ウイングカラーシャツ、黒蝶ネクタイ、黒カマーバンド、黒エナメルのオペラパンプスのスタイルを指し、タキシード本来の姿を意味することでわかるように、黒蝶タイが正解です。
ただし、黒のレギュラータイは日本では葬式のスタイルに定着しているので、国際基準では問題なくとも、残念ながら日本では要注意の着こなしになります。黒のニットタイやクロスタイなら大丈夫でしょう。
その他のNGなこと
その他のNG項目をあげておきましょう。
- シャツが普通のビジネスシャツでカフスもシングル
- アクセサリーをつけている
- ポケットチーフを指していない
- ウイングチップやローファーを履いている
- カマーバンドをしていない
- カマーバンドのひだが下向き
- パンツの裾がダブル仕上げ
- スポーツウォッチをはめている
- トレンチコートを着ている(トレンチは軍用・チェスターコートが正解)
以上がNG項目の主だったところです。覚えておきましょう。
結婚式での新郎のアレンジ方法
結婚式においての新郎のタキシードスタイルでは、通常とは違った大胆な着こなしができます。アレンジ方法を紹介しておきましょう。
ベストを変えるだけでイメージチェンジ
タキシードの中に着るカマーバンドあるいは共生地ベストをやめて、少しカラフルなチェック柄のベストなどを着ると、決して品格は落とさない範囲でお洒落感がでます。
チェックも色々あり、ウインドウペインやグレンチェック、ウィンザーチェック、ガンクラブチェック、タータンチェックなど、それぞれがタキシードの中でよい仕事をしそうです。
花嫁のドレスとネクタイカラーを合わせる
花嫁のドレスの色とネクタイの色を合わせるのも、微笑ましくも素敵なペアルックの一種です。普段できないことなので、やるなら照れずに取り入れましょう。
白ドレス白ネクタイは当たり前でピンと着ませんが、たとえば淡いピンクのドレスと同じトーンのネクタイなら、誰が見ても意味するところは伝わるでしょう。
小物のカラーを統一する
小物類のカラーを統一するのも、派手さはなくても上品な着こなしです。たとえば、淡いミントグリーンをテーマに決めて、ネクタイ・カマーバンドかカマーベスト、そしてポケトチーフというシルク3アイテムの色を揃えるのです。
好感が持てる、涼やかな着こなしになるでしょう。
お色直しはパンツで遊んでもOK
お色直しの時には、パンツを変えてしまって、たとえばデニムにしてしまうとか、チェックのパンツにするとかで現代的なタキシードファッションを楽しめる滅多にない機会です。
ビッグチェックのパンツをタキシードの下に着こなせば、アヴァンギャルドでも品があって、華やぎある着こなしです。
まとめ
タキシードの黒の着こなしと、着崩しも含めての基本情報を紹介しました。ルールが色々あるスタイルですが、ルールに縛られるのではなく、ルールの意味合いを理解して、そのうえで時にはパーティで、遊び心を入れてドレスダウンしてみるなど、タキシードスタイルを楽しみましょう。
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